「ほんこさん」ってなに?「報恩講」のこころ

「ほんこさん」って何?

この時期になると「院主さん、ほんこさんにはいつ来てくれるんかいな」と声を掛けられます。

「ほんこさん」って何?どういう字を書くの?と思う方も多いかもしれません。

「報恩講」(ほうおんこう)。

先人は親しみを込めて「ほんこさん」と呼びならわしてきました。

「ほんこさん」は親鸞聖人のご命日のお勤め

親鸞聖人のご命日である旧暦11月28日をご縁に、そのご恩に感謝する法要が報恩講です。

京都・本山興正寺では11月21日~28日。今年も出勤してきました。

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本山興正寺の親鸞聖人座像

新暦で、1月16日に勤める寺院もあります。

一心寺では、10月中旬から1月初旬にかけてすべてのご門徒宅にお参りし、1月中旬にお寺でお勤めします。

『報恩講式』という書物から

親鸞聖人のご命日に弟子たちがその徳を偲んで集まるようになります。

そして、本願寺の第3代・覚如上人が『報恩講式』という書物を著しました。

「講式」というのは、仏さまや高僧の徳を讃えるために書かれた文章のこと。

これによって後々まで続く「報恩講」の形式が定まりました。

一心寺のご門徒のお宅で勤めるのは親鸞聖人の作られた「正信偈」です。

「恩」について考えてみよう

恩という字は、因の下に心と書きます。因(よる)、心(こころ)。

そこから「恩」は「人をいたむ」、ひいては「めぐむ」という意味になるそうです。

また、「因」とは原因(ものごとのおこり・もと)という言葉に使われています。

もとを訪ねることで見えてくるめぐみが「恩」です。

恩について、私の好きな言葉を紹介します。

「ご恩を返すというけれど 返し切れないからご恩というのでしょう」

日本では恩返しを大切にします。

物をいただいたら、同じくらいの値段、価値のものをお返ししようとします。

しかし、形のないもの、大切なものには値段はつけられません。

ましてや、人生で大切なことを教えてくれた方に対して、何をどのように返せばよいのでしょうか。

先人たちは、親鸞聖人が喜ばれたお念仏を称え、人々に伝えていくことが恩返しであると考えたのです。

返し切れないご恩をいただいたという思いが、親鸞聖人が人生を終えられて750年以上経つ今でも、報恩講を営んでいる因なのでしょう。

「わかるはずの無いほどの御恩をいただいている わかるのはそれだけ」

また、ご恩はがわからないことが多いのです。

わかれば少しなりともお返しすることができるのでしょうが。

両親、ご先祖、出会ってきた方々、食べてきたもの、見てきたもの‥‥すべてが私を作り上げているのです。

真宗のご本尊は阿弥陀仏です。

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一心寺の御本尊・阿弥陀如来像

「阿」は否定、「弥陀」は量るという意味です。ですから「はかりしれない」仏さま。

私たちは、はかりしれないご恩をいただいてここに生きており、浄土への人生を歩んでいるのです。

親鸞聖人のご恩に報いるべく勤めるのが報恩講です。

しかし、その「報恩」は、「南無阿弥陀仏」。

両親、ご先祖、すべての生きとし生けるものに対する「報恩」です。

返し切れない、わからないほどのご恩をいただいていることに気付いて、日々を感謝の気持ちをもって過ごしていきたいものです。

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