しゅう(終・宗)活ついて考えてみましょう

毎年恒例の真宗興正派西讃教区仏教講演会。

まずは開会のご挨拶。「近年、終活に注目が集まっています。人生の最後に考えるべきこと、それは、医療・介護、葬儀・墓、相続、遺品整理の4つだそうです。終活で葬儀・墓について考えるといっても、家族葬にする、墓はいらない、などという事務的なことに終始しているのではないかと思います。終(しゅう)活といっても、何を宗(しゅう〔むね、根本の意味〕)として人生を活きるのかが問われなければ本当の終活にはならないのではないか、という思いで「しゅう(終・宗)活について考えてみましょう」と題して開催させていただきました」。

ご挨拶

第1部はシンガーソングライター・リピート山中さん、アルバム名である『いのちのうた』と題してのコンサート。

ヒット曲『ヨーデル食べ放題』、来場者に呼び掛けて「た~べほ~だ~い」と会場を楽しい雰囲気にしてくださいました。それからの唄は、まさに「いのちのうた」。トークも含めて心に沁み渡るものでした。

派手な衣装で楽しませてくれますが

『なんとかなる どうにかなる なるようになる』では「どうにもならないと嘆くうち どうにかなることも ならなくなりそうだ…「なるようになる」の口ぐせを石に刻んで想守りにしました」。心に響くと同時に、浄土真宗の他力の教えに通ずるものを感じました。

『ありがとうのうた』では「君に逢えてよかったよ 生まれてきてくれてありがとう…あなたの子どもでよかったよ 生んでくれてありがとう 育ててくれてありがとう」。家族のつながりといのちの尊さに胸を熱くしました。

その詩は心に沁みます

医師に同行しての往診コンサートをされている山中さん。余命1か月と宣告された95歳の男性との唄を通じた交流。本人だけでなく家族とも心の交流ができ感動されたそうです。老病死を避けるのではなく、真正面に向き合う中で温かいつながりが生み出されるのだと感じました。

第2部は釈徹宗先生の講演「しゅう(終・宗)活について考えてみましょう」。

よくテレビで拝見する釈先生

先生は浄土真宗如来寺住職、相愛大学教授。NHK「100分de名著」で『歎異抄』を担当、「ニュースシブ5時」で悩み相談「渋護寺」に出演。そしてNPO法人リライフ・グループホームむつみ庵代表として、介護、看取りの現場にも立っておられ、今回のご講師にぴったりです。

先生は、終活は現代社会からわれわれに出された宿題である、とおっしゃいます。延命治療などの終末期医療、様々な形で束縛されている契約社会、地域コミュニティの崩壊で孤立、独居が増加していると現代の課題を指摘されます。その中で、終活が単なる実務作業で終わるのではなく、自分の死に向き合う、宗(根本)に目を向けていくことこそが大切であると呼びかけられました。

『涅槃経』に伝えられるお釈迦さま入滅の姿、『蓮の露』に伝えられる良寛上人を看取ったという貞心尼の姿を例として挙げられました。仏教は、お釈迦さまの死をスーパースターの死ではなく、一人の高齢者の死として伝えています。そこには自分ではデザインできない、しかし、引き受けていくしかない老病死がまざまざと表されています。老病死は誰もが向き合わなければならない課題であり、そこに終活が宗活でもなければならない必要性があるとおっしゃられます。

「渋護寺」での相談では、人間関係と老いに関するものがほとんどだそうです。先生は「縁起の実践」、「空の実践」と呼んでおられますが、できる限り多くの場、人にかかわりを持つ、そしてそれに固執しない、という姿勢が大切であるとおっしゃいます。お世話され上手、おまかせ上手になれれば、生きるのが楽になるでしょう。

 そして、奈良国立博物館の西山厚さんの言葉を紹介されました。障害者の方から「この頃、同じ施設の人たちが亡くなって怖い。死ぬのは怖くないという講演をして欲しい」というお願いがあったそうです。それを受けた西山さんは、涅槃図を通して「父が亡くなった時におばあちゃんが来た。それは当然、あれほど父を愛したおばあちゃんが来ないはずはない。私の時には先に往った父が来ないはずがないという実感がある。だからその時に、父といい話がたくさんできるように生きるんだ」というようなお話をされたそうです。

その語り口は分かり易くも深い

先に往った(亡くなった)方の目を意識しながら暮らし、先に往った方の願いに耳を澄ませながら生きていくのも長生きの値打ちであり、終活の一つとしていただきたいとおっしゃられました。浄土真宗はお浄土を宗とする教えです。帰るところ、お浄土がある人生を生(活)きることが宗活、それによって安心して人生を終えることができる終活になるのではないかと感じました。

最後にお礼の言葉として「私たちが引き受けなければならない老病死を一緒に分かち合うことのできる仲間がいれば、最後に阿弥陀さまにおまかせすることで、私たちの心が軽くなるのではないか」とお話させていただきました。真宗興正派のスローガン「今こそお念仏-つなごうふれあいの輪」も、それを願ってのものであると感じつつ、閉会としました。

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